魔王に捧げる物語




サイドに流した髪もバッチリで、歩くたびに緩い巻き髪がゆれる。



鏡に映った自分は、自分に見えなかった。




「「いってらっしゃいませ」」


二人が深々と頭を垂れて、ミラは少し戸惑いながら、

「いってきます……」


と、部屋を出た。







ニルはミラが出てくると面倒そうにソファーから立ち上がった。


いつも黒っぽいものを着ているのに珍しく違うらしく、明るいグレーのスーツだった………。


しかし…………、




「ニル…………足」



靴を忘れていたのか、裸足だ。

しかし彼は気にした様子はなかった。


「そとはあんまり歩かないからいいよ」


「…………」

「?」


「怪我とか……」

「ないね」

「何か踏んだり……」

「………履くよ」



言葉と同時に靴は現れている。

せっかく、ニルにしては珍しくキッチリしているのに、靴がないのはどうかと内心思った。


あまりやる気の感じられない様子でジャケットを羽織り、ミラを手招きする。



近づくとギュッと抱きしめられた。