無茶な事も言われたし、まとわりついたりもあった。

彼女だけじゃない、彼女の父も。

人は一ヶ所には留まらなず、自身にとって一瞬を駆け抜けて死に向かう。

今日限りかもしれない生に輝く姿は愛しさがあり、美しい。




ふと、イリスが振り返った。


「あなたに会えて本当に良かった………。

私は人の世界で愛する人を見つけ、添い遂げます」


「そう……お前なら大丈夫だよ、クラウディオの子だから」


「……………魔王様の妻にはなれなかったけれど、私は世界一幸せな花嫁になってみせます!」


「うん」




「ありがとう、魔王様。
さよなら」





小さかった頃と同じ笑顔で彼女は行った。

友であるクラウディオが最期まで気にかけた最愛の娘。


人の幸せの中で生き、怒って泣いて、喜んで……最期は笑って死んでほしい………。



様々な思いで、見えなくなるまでその姿を見送った。