各々が顔を見合わせながら、楽器を奏でる。
最初は探るようにお互いの音に耳を傾け、やがてそれぞれの主張が強くなっていく。
ギタリストの誘うような目つきに応えるように、平良が力強い音を出す。
ドラムが激しさを増し、ギターがコードをかき鳴らす。
小さな波が合わさり、大きな波のうねりへと変わる。
良子は、初めて知るジャムセッションに、全身の神経を集中させた。
全て即興だということを、良子はにわかに信じることができない。
三人それぞれが即興で、それを合わせてもおかしくならないどころか、感じているものがぴったり重なっているように見えた。
平良の言う“フィーリング”が合っているのだと、良子は考える。
音楽のことは全然わからなくても、三人の演奏がすごいものだということは肌で感じられた。
この三人は、きっとバンドを組むことになる。
そして、すごいバンドになる。
それを期待するだけで、良子の胸はドキドキと高鳴った。
全身を突き抜ける音が、心を激しく揺さぶった。