あっという間にライヴは終わった。


良子も平良も肩で息をしながら、ステージ横の壁にぺったりと体をつけるようにもたれかかった。


そしてお互いの疲労ぶりを笑い合う。


「ライヴって楽しいね!あたし、こんな興奮することって今までになかったよ!」


「だろ?サイコー!」


平良は両手で前髪をかき上げ、顔を天井に向ける。


けれど次の瞬間、


「あ!」


大きく声を上げた。


「スタジオ!はしゃぎすぎて忘れてたっ」


「え?…あ、さっき行ってた、ジャム?」


「そう!ちょっとしか使わせてもらえないから、早く行かなきゃ」


平良のその言葉に、別れが近付いていることに気付いた良子の心は、一気に曇る。


「そっか…」


淋しいけれど、平良のバンドのためには仕方ないと思い、無理矢理笑顔を作ろうとする良子に、


「良子ちゃんも!」


良子にとってあまりにうれしい言葉が届く。


「え!?いいの!?」


飛び上がりそうな勢いで聞き返すと、平良は返事の変わりに、にっこりと笑った。


「さ、行くよ!」


そう言って駆け出す平良の背中を追って、良子は跳ねるように走った。