頬を伝うのは、汗か、涙か。
良子は拳を突き上げる。
弘治と平良の作り出すリズムに乗って、体を揺らす。
明人が前に出てギターソロを弾き、オーディエンスをあおった。
平良が挑発的な目で笑う。
そして、あの日、良子が初めて平良のライヴを観た時と同じように、フロアに視線を流した。
その視線が、良子のもとへとたどり着く。
良子の胸が、大きく跳ねた。
目が合った。
しかしあの日と違うのは、気のせいではないということだ。
平良は口の端で笑う。
良子は拳を高く突き上げて応えた。
それを合図に、平良はベースに覆いかぶさるようにして、体を揺らす。
指がネックの上をしなやかに這う。
明人が歩み寄り、二人で向き合って競うようにかき鳴らした。
不敵に笑い合う明人と平良。
それを楽しげに見守りながら、汗を散らしてビートを刻む弘治。
間違いない。
“KART”は最高のバンドだ。


