開演時間が迫り、フロアは多くの人の熱気で包まれていた。
良子は辺りを見回し、ホッとため息をつく。
「良かった。たくさん集まって」
一方、圭は当然と言わんばかりの表情で頷く。
「この辺りだと有名な三人だからね。この三人がバンドを組むなんて、想像するだけで興奮するよ」
一葉はまだライヴハウスにデヴューしたばかりなので三人のことは知らなかったが、圭の言葉を聞いて大いに期待している様子だ。
おそらく、ここに集まる多くが、期待を込めてカートの初ライヴを待っている。
そのことに良子は感心する反面、
「もしかして、やる前から、かなりハードル上がってる?」
カートというバンドは、かなり厳しい目と耳で判断されようとしていることに、今になって気付く。
「もちろん」
圭の言葉に、ごくりと唾を飲む。
テクニックがある者同士が組んでも、必ずしも良いバンドが生まれるとは限らない。
化学反応に例えられるように、メンバー同士の相性や相互作用によって、バンドは良くも悪くもなる。
オーディエンスは、カートがそのどちらなのかを見極めようとしているのだ。
良子にとっては、カートはすごいバンドに違いない。
しかしそれが一般的な解釈かどうかわからなかった。
良子は音楽を聞き慣れていないし、身内だからとひいきしている面も少なからずある。
「緊張してきた…」
良子は胸を押さえる。
やがてフロアの照明が落ち、ステージに一組目のバンドが姿を現した。


