わぁっと歓声が上がって、バンドメンバーがステージに現れた。


各々が楽器を手にし、目配せをする。


そして、ドラムのスティックがカウントを刻む。


次の瞬間、ドンッという衝撃が、全身を貫いた。


音の波が押し寄せる。


あちらこちらで歓声が上がり、たくさんの腕が突き上げられる。


人が上下に揺れる。


良子はどうしていいかわからず、隣の平良を見上げた。


すると平良は、拳を突き上げてみせる。


それを真似て腕を上げると、その瞬間、人の波に飲まれた。


良子はその波に逆らわず、体を揺らしたり、跳ねたりした。


平良の肩が触れているのにドキドキする間もないほど、良子は夢中でその波に乗り続けた。


初めて知る感覚に、心が震える。


知らない人達との一体感。


バンドと観客の一体感。


リズムと自分の心臓の、一体感。


良子は、今までにないほどの高揚を感じていた。


曲の合間に平良を見ると、汗をうかべた顔で、ニッと笑ってくれた。


そして目配せして、一緒に高くジャンプしたり、歓声を上げたりした。