夢のような世界に良子を残したまま、リハーサルは終わった。
ぼうっとしているところを弘治に促されて控室に入るが、すぐに現実には戻ってこられそうになかった。
「爆音で耳やられちゃった?」
心配そうな明人に、良子は曖昧に頷くことしかできない。
やがて意識がはっきりしてきた頃には、開場時間がすぐそこまで迫っていた。
「ライヴ久しぶりだな。燃えるぜ」
弘治が少し緊張した面持ちでそうつぶやきながら、スティックを両手に持ってストレッチを始める。
明人は他のバンドのメンバーと談笑し、平良は控室の隅でベースを弾いていた。
一番最初のバンドと、二番目のカート以外のほとんどが、控室を後にする。
出番まではフロアでライヴを楽しんだり、気分転換に外に出たり、思い思いに過ごしていた。
「良子ちゃんもフロアで聞いててよ」
舞台袖にいたかったが、狭いので邪魔になってしまうといけないと思い、良子はフロアに行くことにした。
「みんな、がんばってね!」
良子の言葉に、三人は力強く頷いた。


