次の瞬間の衝撃を、どう表現すればいいのだろう。
良子はその術を知らない。
それでも辛うじて、最も近い言葉がこぼれる。
「爆発した…」
音の塊が、良子を襲った。
良子の声は当然すぐに、大音量のカートのサウンドによってかき消される。
重なった音がうねりながら、フロア中を駆け回る。
弘治の生み出すリズムが、平良がたどるベースラインが、足元を揺らす。
明人のギターが体を貫き、その声が全身を包んだ。
あまりの衝撃に、良子は自分の体を抱きしめる。
全身に鳥肌が立っていた。
体のすぐ外側を、音が渦となってまとわりついてくるようだった。
体が浮くような奇妙な感覚に襲われる。
音の波にのまれる。
うまく呼吸ができない。
溺れていくようだった。
その感覚に、恐怖さえ覚えた。