カートのライヴまでの一週間は、今までになく良い雰囲気で練習に励んでいた。
明人の力が程良く抜けて、それが弘治や平良にも伝染したようだ。
互いに案を出しながら、ギリギリまで時間を使って曲を練っていく。
どんどん凄味を増していくバンドを、良子は一時も見逃すまいと見つめていた。
そしてその合間には、フライヤーをせっせと配って歩く。
チケットはメンバーの知人を通じてあらかたさばけたと聞いていたが、何もせずにじっとしているわけにはいかなかった。
そして訪れた、ライヴ当日。
夜のライヴに向けて、昼過ぎから準備が始まる。
四人そろってライヴハウスを訪れ、良子も関係者ということでバックステージパスを受け取り、出入りが許された。
狭い控室に入り、共演するバンドのメンバーに軽く挨拶をして回る。
弘治の知り合いのバンドであったり、他にも明人や平良の顔見知りが多く、和やかな雰囲気に包まれていた。
ステージではリハーサルが行われ、やがてカートが呼ばれた。
良子はフロアの隅で、その様子を見守る。
PA室からの指示に従って、楽器の音を順番に出して調整が進められる。