“カート”のライヴは必ず観に行くと強く宣言し、圭は仲間のもとへ戻って行った。


一葉に会えなかったのは残念だったが、きっとこの先に会える機会はあるだろう。


「さ、帰ろうか」


明人に続いて地上へ続く階段を上りながら、良子は非現実から現実へ移り変わっていくような、不思議な感覚を楽しんでいた。


夜風が吹き込んできて、心地良く頬を撫でる。


「明人君、今日はありがとう。一緒に来てくれて」


「いや、おれの方こそありがとう。良い刺激受けたよ」


地上にたどり着いた明人は、腕を高く引き上げて伸びをする。


「おれ達もがんばらないと。あいつらに負けない、良いライヴがしたいな」


そう言った明人の横顔は清々しく、良子はそっと微笑む。


ライヴが決まってからというもの、メンバーの表情は常にどことなく硬く、今の明人のような顔を見るのは久しぶりだった。


「楽しみにしてるね。あたし、カートのファン第一号なんだから」


「メンバーにして、ファンか。そりゃあ、良いライヴ見せないと、納得してもらえないなぁ」


明人はまっすぐに前を見据えた。


その目に強い意志のようなものを、良子は見た気がした。