ドリンクを飲み終えた頃には、フロアにはかなり多くの人が集まっていた。
「結構入ってるね」
明人の経験から言うと、この手の対バンライヴにしては動員が多い方だ。
「ジェイビーズのファンもいるかな」
わくわくしながら良子が言うと、
「あの生意気小僧のお手並み拝見だね」
明人は口の端で意地悪に笑う。
「もー。圭君は明人君に憧れてるんだから。嫌っちゃやだよ」
良子が明人のシャツの裾をつまんでにらんでくるが、小柄な良子がそうすると、上目づかいに見つめられているようにしか見えない。
そんな目で見られると、これ以上はいじめるわけにいかなかった。
「はいはい」
明人は苦笑して頷く。
その時、フロアの照明が落ちて、代わりにステージを照らすスポットライトが一斉に点いた。
「始まるよ!」
人の流れが前方に向かい、明人と良子もその勢いで、ステージに近付いた。
一つ目のバンドは、男性四人のバンドだった。
やたらとうるさいパンクバンドで、明人が「ダメだな」とつぶやいたのを、良子は聞き逃さなかった。


