ジェイビーズのライヴ当日、明人と良子はライヴハウスの前で待ち合わせることになっていた。


良子が先に着いて待っていると、


「良子?」


気分転換にと外に出てきた圭と出くわした。


「圭君!来たよー」


手を振って再会を喜ぶ良子と裏腹に、


「明人さんは!?」


圭は緊張した面持ちで良子に詰め寄る。


「ふふふ。来るよ!」


少しもったいぶってそう言うと、圭は満面の笑みを浮かべた。


「まじ!?すげー!良子ありがと!」


興奮した圭は良子の手を取り、大きく上下に振る。


「よっしゃ、気合入ってきた!」


圭は両手で自分の頬を叩くと、大きく手を振って戻っていった。


そのすぐ後に、明人が到着する。


「あ、おしい!今まで圭君いたんだよ」


良子が駆け寄るも、なにやら不機嫌な様子の明人。


「知ってる。馴れ馴れしい奴だな」


圭が良子の手を握るのを見ていた明人は、圭を危険人物と見なしていた。


「あ、あれは、明人君が来るって言ったら喜んだだけで」


良子の言い訳は全く聞き入れられなかった。


「良子ちゃんは無防備すぎんの。簡単に触られちゃダメだよ。わかった?」


明人が強い口調で良子を叱る。


「…はぁい」


口を尖らせたまま、良子は渋々頷いた。