良子は、少年に渡されたフライヤーに視線を落とす。
良子のものと同じく、対バンライヴの告知だった。
中でも最も強調されているバンド名は、
「“ジェイビーズ”…」
「おれ、ギターの圭。君は?」
続いて名乗る良子に、人なつっこい笑顔を見せる圭は、平良と同じ高校二年生だというが、
「ライヴ観に来てよ。できたら明人さん誘って…」
甘えるように見つめる丸い目が、歳より幼く見せていた。
「はい!メンバーみんなに声かけてみるつもりです」
「やった!サンキュー」
無邪気に笑う顔を見るとますます、良子は圭が年上だということを忘れそうになる。
「うち、メンバーに女の子がいるんだ。その辺にいると思うんだけど…あ、いたいた」
“カズハ”と呼ばれた少女がやってきて、ペコリと頭を下げる。
おとなしそうで、黒髪に控えめなファッションであったため、バンドをやっているようには見えないというのが、一葉に対する良子の第一印象だった。
「一葉はドラム。中三だから、良子の一個下か」
“良子”と呼ばれ、一瞬戸惑う。
呼び捨てにされることは慣れていないし、加えて初対面の男の人からとなると、なんだかくすぐったい。
しかし嫌な感じはしなかった。
むしろ、親しみを込めてそう呼んでくれたことが伝わってきたので、圭がそう呼ぶのに違和感を感じない。


