散らばっていたフライヤーを全て回収し、立ち上がった時、
「ライヴやります!よろしくーっ」
まだ幼さの残る少年の声が飛び、他にもフライヤーを配りに来た人がいることに気付く。
パーカーとジーンズに黒いキャップをかぶったその小柄な少年は、良子と歳が近いように見えた。
良子に気付いた少年が駆け寄ってくる。
「よろしく!」
フライヤーを差し出され、良子が反射的に受け取ると、
「そっちのもちょうだい」
屈託のない笑顔で、少年は手のひらを突き出した。
良子がフライヤーを渡すと、それに目を通した少年が問う。
「君は何の楽器?」
「あ、いえ、あたしはメンバーじゃないんです。明人君、弘治君、平良君っていう男の人3人のバンドです」
そう説明すると、少年は目を丸くした。
「明人さんって、ギターの?おれ知ってるよ!」
その言葉が、良子の沈んでいた気持ちを救い出す。
「本当ですか!?」
「何度かライヴで見たよ!めちゃめちゃかっこよかったー」
目を輝かせる少年を見て、良子はうれしくなる。
「今回のバンドの“カート”も、すっごくかっこいいですよ!ぜひ見に来てください!」
そう言うと、少年は力強く頷いてくれた。


