スタジオを後にして、街の楽器店をいくつか回った。
どの楽器店にも、ライヴの告知やバンドメンバー募集の掲示板のようなものが設けられており、良子の申し出は快く受け入れられた。
良子が思っていたより多くのフライヤーが手を離れた。
調子を良くした良子は、ライヴハウスにも足を運ぶ。
いつも受付をしているニットキャップの男を見つけ、ライヴハウスに貼ってもらう分を渡してから、
「外で配りたいんですけど、いいですか?」
今夜のライヴの客をターゲットに、ビラ配りをしたい旨を伝える。
「通行人の迷惑にはならないように。あと、ゴミが出たら必ず持ち帰ってね」
「はい!ありがとうございます!」
頭を下げると、男は「がんばって」と笑ってくれた。
良子は外に出て、既に並んでいる人にフライヤーを差し出す。
「カートです。よろしくお願いします」
しかしそれは受け取られなかった。
「ライヴやります。よかったら来てください」
これからライヴを観ようとしているのだから、荷物を増やしたくない気持ちもわかる。
良子はしつこく押しつけることなく、順番にフライヤーを差し出していった。


