良子はクマのイラストを描き加える。
平良がつけているピアスをモチーフにしたものだった。
「うん、かわいい!…って、かわいかったら駄目か」
クマにサングラスをかけたり、ライダースジャケットを着せたり、楽器を持たせたりしてみる。
試行錯誤を重ね、ロックテイストなクマが紙の上で駆け回る。
しかし、どうも納得がいかない。
「KARTって、レーシングカートのカートだよね…。車の要素も入れた方がいいかな」
デフォルメしたレーシングカートに、クマを乗せてみる。
ゴーグルをつけて、車には“KART”の文字を入れた。
その出来栄えに、良子はようやく満足する。
「うん、なかなかいいかも。目立つよね」
良子は、マジックペンで清書したフライヤーの原稿を見て、ひとり頷いた。
これを市立図書館の安いコピー機で印刷して、ライヴハウスやスタジオに貼ってもらったり、ライヴハウスの前で配ろうと考えていた。