ライヴが決まってからの練習は、いつもに比べてピリピリしていた。
アイディアがぶつかり、強い口調で言い合うこともあった。
しかし曲が形作られていくことが、うまくいっている証拠なのだろう。
少し心配になる良子だったが、良い緊張感が漂っているのだと思うことにした。
良子は、自分にも何かできないかと考える。
チケットを売ろうにも、友達のいない良子にそれは難しかった。
「ねぇねぇ、弘治君。あたしに手伝えることはない?」
次のスタジオ練習で、そう聞いてみるが、
「うーん…考えとく。ありがとね!」
ポンポンと頭を叩かれて終わってしまった。
良子はスタジオの隅の丸椅子に腰かけ、足をぶらぶら揺らす。
規則的に穴の刻まれた防音の壁に、イベントのポスターや、地元のインディーズバンドのフライヤーが貼ってあるのを、ぼんやりと眺めていると、
「…あ!」
良子のもとに、一つの良案が舞い降りた。