コトリと軽い音を立てて、イヤホンが机の上に置かれた。


弘治と明人は緊張した面持ちで、平良の言葉を待つ。


後輩といえど、音楽の実力では、二人とも平良に及んでいないと感じていた。


だから、どんな言葉でも受け入れるつもりだった。


「2曲目は、今回は難しいと思う」


平良の言葉に、弘治が困惑する。


「でも、それは明人が…」


しかし明人は、それを制する。


「弘治、いいんだ」


平良には、明人が一番気に入っているのがその曲だと予想はついていた。


だから敢えて言う。


ライヴで思うように盛り上がらず、落胆させないためにも。


「いい曲だと思う。でも、他の曲とのバランスを考えると、今回の対バンではやらない方がいい」


平良が説明するも、弘治は納得のいかない顔をする。


「弘治、別にボツになったわけじゃないだろ。次のライヴではできるように準備していけばいいよ」


明人のその言葉のおかげで、どうにか気持ちを落ち着かせておくことができた。