良子は耳を疑う。
“KART”は、メンバーの頭文字を取った名前だと言っていた。
仮のバンド名ではあるが、そこに自分の名前が入っているということが何を意味するか、すぐに理解することができない。
明人と平良の方を見ると、二人ともにっこり笑って頷いた。
その目が言う。
良子もバンドのメンバーなのだと。
ここが、良子の居場所なのだと。
目の奥が熱くなる感覚が、本当は淋しかったのだということを良子に気付かせてしまう。
どこにも居場所がないことを、平気なふりはできた。
でもそれは、受け入れることとは全く意味が違う。
良子はいつも探していた。
そして誰より強く求めていた。
自分の居場所を。
「うれしい!!ありがとう、弘治君!」
良子は感激のあまり、弘治の腕に飛びついた。
しかしすぐに、
「おいおいおい!それ駄目だって、良子ちゃん」
デレデレする弘治の腕から、明人によって良子がはぎ取られる。
「なんだよ、邪魔すんなよ」
つまらなさそうに言う弘治の陰に隠れて、良子はにじんだ涙をこっそりとぬぐった。


