「何にする?」
平良がメニューを引き寄せて、良子は我に返る。
「うん、えっと…あ、でも、受付で言われたよ?『未成年はアルコールお断り』って」
口を尖らせる良子に、平良は、
「店は立場上、ね」
そう言ってニッと笑い、
「二人の秘密」
人差し指を口元に当てる。
“二人の秘密”という言葉の響きに、良子は思わず口元を緩める。
「オレンジ飲もうと思ってたんだよね。甘いのは好き?」
「うん」
「じゃ、無難にカシオレ」
平良は、良子の手からチケットを抜き取り、バーカウンターに置いた。
間もなくしてプラスティックのコップが二つ差し出される。
中で揺れるのは、炭酸の泡が浮かぶ透き通った液体と、綺麗な赤い液体。
そのうち赤い方が、良子の手に渡される。
初めて飲むお酒に、恐る恐る口をつけ、驚いた。
お酒というと苦くて大人の味だというイメージがあったけれど、甘酸っぱくて、好きな味だ。
少しの罪悪感が、その味をいっそう特別なものにした。