良子がスタジオを訪れるやいなや、からかう弘治。
「スカートが短すぎないのが、逆にエロい」
進学校だが校則はゆるく、スカートを腰のところで折って短くすることは見逃されていた。
そのため、ほとんどの女子がそうしていたが、良子は膝が見える程度の指定の長さのままだった。
「何それっ!意味わかんないんですけど!弘治君のバカバカっ」
良子は弘治のドラムスティックを奪い、それで背中を叩く。
「ハッハッ」
そんなやり取りと見ながら、平良は声を上げて笑う。
そこへやって来た明人に、良子が泣きつく。
「明人君!弘治おじさんがいじめるっ」
すると明人は、良子の全身を舐めるように見て、
「お、制服。そそるねぇ」
ニヤリと笑ってみせる。
「なっ…もー!!」
味方を二人失った良子は、最後の希望の一人を振り返るが、その瞬間、嫌な予感に顔を歪める。
「まさか…平良君もそういう目で…?」
不信感たっぷりの視線を投げかけられた平良は、ニコッと笑って言う。
「世の中にはこーゆー男がいっぱいいるから今まで以上に気をつけろって、人生の先輩からのアドバイスだよ」
「…で、結局、平良君はどっちなの?」
「さ、練習始めようか」
良子の問いかけはいとも簡単に無視される。
良子は頬を膨らませたまま、スタジオの隅の椅子に乱暴に腰かけた。
しかし三人の演奏が始まると、そんなことはどうでもよくなってしまうのだった。