平良は幾通りものベースラインを試し、明人と弘治は、改めて平良の豊かな才能に感心する。
徐々に曲のイメージが固まっていった。
しかし、良子の頭上で赤いランプが点滅を始める。
レンタルした2時間まで、あと5分というサインだ。
大慌てで帰り支度をする。
平良のシールドを巻くのを手伝おうと手に取ると、
「これ、特別な巻き方があるんだ。今は時間がないから、今度教えるよ」
平良はそれを受け取り、慣れた手つきで束ねる。
「良子ちゃん、マイク取ってくれる?」
明人が、手持無沙汰にしていた良子に役割を与え、良子は喜んでマイクスタンドに向かう。
スタンドからマイクをはずし、マイク用の小さなポーチに入れて、明人に渡す。
「サンキュ」
すると弘治も良子に言う。
「良子ちゃん、おれにジャケット着せてくれる?」
「はい!……え?」
勢い良く返事をしたはいいが、あたふたとする良子を見て、弘治はくつくつと笑っている。
「弘治君、良子ちゃんいじめないでよ」
平良が少しつまらない気分でそう言い、弘治は肩をすくめる。


