今回このバンドで演奏する最初の曲は、明人が作った。
ギターの弾き語りを録音した電子ファイルを平良と弘治に渡し、それぞれが構想を練ってきたのが今日だった。
弘治のドラムを土台に、平良のベースと明人のギターが乗り、明人の声が重なる。
一つの音楽が生まれる瞬間に、良子は体を震わせた。
特に、初めて聞く明人の歌声に心を奪われる。
力強さの中に色気と憂いが同居する甘い声が、激しいロックを歌う。
長身で整った顔立ちに加え、この特別な歌声を持つ明人が、ステージの上でひときわ目を引くことは、良子にも容易に想像ができた。
高校時代に結成した明人と弘治のバンドは、これまで何度かメンバーの入れ替えがあった。
ボーカルを加えた4ピースバンドのこともあり、その際、明人はギターに徹する。
しかし弘治は、明人のボーカリストとしての才能を買っていたため、4ピースバンド時代には不満を持っており、今回は3ピースバンドがいいと強く望んでいた。
明人の声と、このあたりではトップクラスの実力を持つ平良のベースがあれば、すごいバンドができると確信し、平良へのスカウトを積極的に行ったのは弘治だった。
こうして三人で演奏できることを、今一番喜んでいるのは、弘治だった。


