今回訪れたスタジオは部屋がいくつもあり、レンタルスタジオの他に、楽器のレッスンも開かれている。
受付のロビーに、既に二人の姿があった。
「あ!リョーコちゃんだ」
「待ってたよー」
二人が良子を温かく迎える。
平良が受付を済ませている間に、それぞれ自己紹介をする。
二人は高校時代の同級生で、昨年の春に卒業して以来、音楽の道に進む為にアルバイトをして生計を立てている。
ギターとボーカルを担当する明人は長身で、黒髪を今日は後ろで結んでいた。
ドラムを担当する弘治は、ソフトモヒカン風の茶色の短髪で、がっちりとした体形をしている。
二人とも明るい性格で、良子の緊張をほぐしてくれた。
スタジオに入り、以前と同じように、良子は部屋の隅に丸椅子を置いて座った。
各々のセッティングを観察するが、視線が止まってしまうのは、やはり平良だ。
チューニングをする時、少し顔を傾けて、宙の一点を見つめる目が好きだ。
ドラムセットの調整を終えた弘治が、スティックを二本まとめて両手で握り、腕をひねってストレッチをしながら言う。
「平良君、この前渡した曲、聞いてくれた?」
ちょうどチューニングを終えた平良は、顔を上げて答える。
「もちろん。ベースラインのアレンジ、考えてきたよ」
ニッと笑う平良に、明人も顔を上げる。
「さすが平良君」
そのやり取りを聞いて、良子は心を躍らせる。
ジャムセッションも聞いていて楽しかったが、歌のついた曲を早く聞いてみたかった。


