平良から携帯電話を受け取ると、良子は心底うれしそうに笑った。


「ありがと!平良君、すごいね!尊敬しちゃう」


そこまで言われるほどのこともなく、平良は照れてアイスコーヒーのストローをくわえる。


「いやいや、普通だって」


そう言うと、良子がピタリと動きを止め、


「え、なんか、あたしが普通じゃないって言われた?」


頬を膨らませて、平良を見上げた。


その顔を見ると、ついからかいたくなってしまう平良。


「ま、そうとも言う?これで今時の若者に一歩近づいたね」


くくく、と笑いながら言うと、良子が悔しそう顔を歪める。


「うぅ。またバカにされた」


「バカにするなんて、まさか。天下の北高生に向かって」


「それすら、バカにされてる感じ」


良子の頬がどんどん膨れてくるので、いじめるのはここまでにしようと、平良はにっこりと笑って顔の横で携帯電話を振ってみせた。


「これでいつでも連絡取れるな」


その一言に、良子の頬はしぼみ、唇がきゅっと結ばれる。


平良には、良子が照れているように見えた。


コロコロと変わる表情が楽しくて、良子をいじめるのが癖になりそうだ。