真新しい携帯電話を手に、良子は約束より20分も前に待ち合わせ場所に着いてしまった。
ショーウィンドウに映る自分の髪型を直したり、もっとオシャレしてきた方がよかったと後悔したり、携帯のディスプレイを点けたり切ったりしながら、そわそわしながら平良を待つ。
その一部始終が、平良が歩いてきた高架橋から丸見えだった。
初々しい良子の姿に、微笑ましい気持ちになる。
「あれ?早いね」
頬がゆるんでしまわないよう抑えていたのに、良子がビクッと肩を揺らすものだから、もう少しで笑ってしまいそうだった。
「た、平良君っ!久しぶりっ」
「ごめん、待たせた?」
「ううん、全然!」
力を込めてそう言う良子の気持ちがうれしくて、平良はそっと微笑む。
そして腕時計に目を落とす。
「ちょっと早いから、お茶でも飲んでいこうか」
その提案に、良子の思考が一瞬だけ停止する。
平良が顔を上げて、良子の視線をとらえて微笑むので、慌てて返事をした。
「う、うん!」
良子にとって、男の人と二人でお茶を飲むなんて、大事件だ。