もちろん行くと返事をしようとすると、平良は言う。


「実はみんな『リョーコちゃん来ないの?』ってうるさいんだよ。『女の子がいてくれる方が華があっていい』んだってさ」


“華”という言葉に照れてあたふたとする良子は、こんな姿を見られないで済む電話でよかったと思った。


深呼吸して気持ちを落ち着け、改めて返事をする。


「行きたい!」


期待通りの反応に、平良はそっと微笑む。


「じゃあ明後日の…夕方5時半に、良子ちゃんが前に乗ったバス停の辺りで待ち合わせ。前とは違うスタジオだから、一緒に行こう」


その提案は、良子をさらに喜ばせる。


バス停で待ち合わせということは、平良がわざわざ迎えに来てくれるということだ。


そんなものすごいシチュエーションを想像するだけで、ドキドキして倒れそうになる。


興奮しすぎて、今夜は眠れないかもしれないと思った。


電話を切った後もしばらく興奮はおさまらず、まだ平良への発信履歴しかない携帯電話を、ぎゅっと握りしめた。