それからまた、一週間ほどが過ぎたある日。


「…はい」


きっとまた、見知らぬ番号からの着信を不審がっているような平良の声が、受話器を通して良子に届く。


「フッフッフッ…さて、あたしは誰でしょう」


「え?良子ちゃん?…あれ?」


平良の声が一瞬遠ざかり、携帯電話のディスプレイを見直している姿が、良子の目に浮かぶ。


前回よりも平良が慌てていたのは、そこに“090”から始まる携帯電話の電話番号が表示されていたからだ。


「ケータイ買ってもらったの!」


良子は待ちきれずに言った。


「親から合格のお祝い!」


「まじ!?受かった!?やった!おめでとう!!すげー!知り合いが北高に受かるなんて初めてだよ」


自分のことのように喜んでくれる平良君の反応がうれしくて、良子は顔がニヤニヤするのを止められず、変な笑い方をしてしまう。


「エヘヘ。ありがと」


そこで、平良は名案を思いつく。


「スタジオの後、合格祝いやろう!明後日なんだけど、練習見に来るでしょ?」


良子にとって、あまりに素敵な提案だった。