「次いつになるかまだ決まってないから、また電話してよ」
平良の言葉に返事をしてから、良子はもう一度だけ勇気をふり絞る。
「あ…平良君。あたしね、明日、受験なの。高校の」
言いたかったことの、二つ目。
「まじ?がんばってよ!」
実を言うと、良子はその一言を聞きたくて電話をした。
不安な受験を乗り切るための、自分にとって何より強力なお守りが欲しかった。
「どこ受けるの?」
「北高校」
北高校は、市内でトップの進学校。
別に目的はなかったけれど、中学の成績に合わせてこの高校を選んだ。
良い高校に入って、良い大学に入れば、それだけ将来の選択肢が広がるという大人達の言葉を受け入れただけだ。
「まじ!?良子ちゃんってメチャメチャ賢かったんだね」
平良があまりに大げさに驚くので、
「…なんか、“見かけによらず”って聞こえてきたような気がする」
良子は冗談を言って対抗する。
「あれ、聞こえちゃった?」
「ひっどーい!」
「ハッハッ!うそうそ」
二人で笑い合う。
良子も平良も、時間を忘れてしまいそうだった。


