それから二週間後。
良子は勇気を振り絞って、家の電話から平良の携帯電話を鳴らした。
数回のコールが途切れ、
「はい」
見知らぬ電話番号からの着信に警戒するような、平良の少し強張った声が応える。
「平良君のケータイですか?」
「…あ、良子ちゃん?」
相手が良子だとわかって平良の緊張がゆるみ、声がワントーン高くなる。
そんな些細なことが、良子の頬をほころばせる。
「うん、良子だよ!今大丈夫だった?」
そう聞くと、
「大丈夫だよ。ちょうどスタジオ向かってる途中」
車のクラクションの音が、受話器越しに良子に届く。
良子は、ベースが入った黒いバッグを肩にかけて、道を歩いている平良を想像しながら、
「これから練習?バンドの調子はどう?」
聞きたかったことの一つを、まず問う。
「まぁまぁってとこかな。よかったらまた見に来る?」
「いいの!?」
思わずぎゅっと握りしめた受話器の向こうで、平良が笑う。
「男ばっかのむさ苦しいとこでよければ」
「アハハッ。そんなことないよー。二人ともいい人そうだよね」
一度だけ会ったギターとドラムの人の顔を思い返す良子。
挨拶を交わしただけだったけれど、気さくな人達だった。


