ライヴハウスに戻り、受付でペンを借りることにした。
半券の裏に、平良が携帯電話の番号を書く。
書くことに集中しているのをいいことに、良子はその横顔をじっと見つめた。
金色の髪からのぞく、少しつり上った目。
まつ毛の一本一本まで、観察してしまう。
右耳に、小さな銀色のピアスが一つ。
真ん丸ではなくて、何かの形のようだ。
少し顔を近付けてよくよく見てみると、
「クマさん!」
なんと、平良の耳に光るピアスは、クマの形をしていた。
ドクロか何かだと思っていただけに、クマのかわいらしさがより引き立つ。
そのギャップに、良子は興奮を隠せない。
平良はクスクスと笑いながら、
「ピアス、かわいっしょ」
耳を少しだけ隠していた髪を、指ですくう。
「かわいー!あたしもこういうのしたいな。ピアス、開けようかな」
そんなことを口走る良子に、
「中学生が、怒られちゃうよ?それにね、開けるのめっちゃ痛いから!」
平良が顔を歪めておどす。
でも次の瞬間、ふわっと笑って、
「大人になってからでも遅くないよ」
そう言うので、良子はこの衝動を一旦胸の奥にしまうことにした。
学校で見つかって先生に怒られるのも、親が悲しむのも、平良が言うのが本当なら、痛いのも、良子にとってはどれも嫌だ。
自分の耳たぶをつまんでいた良子に、平良が電話番号を書いた半券を渡す。
「いつでもかけて」
その言葉に、良子の胸が激しくときめいたのは、言うまでもない。


