ぴたり、と足を止める良子。
平良が自分に連絡先を聞いてる、ということを、徐々に理解する。
初めて見たのがステージの上だっただけに、平良は良子にとって芸能人のような存在だった。
そんな人と連絡先を交換できるなんて、ものすごいことだ。
でも。
「あたしケータイ持ってなくて…」
せっかくのチャンスを逃し、良子はしょんぼりとうなだれる。
一方、平良は、
「あれ?おれって危ないヤツだと思われてる?」
そう言って苦笑いをしてみる。
遠回しに断られたのではないと、確かめるためだった。
平良の思った通り、良子は慌てて弁解する。
「ちがっ…ほんとに持ってないの!中学生だし、必要性感じてなかったし、連絡取るような人いないし…」
あたふたとする良子を見て、平良は吹き出した。
「アハハ!わかったわかった、信じるよ。じゃあ、おれのケータイ教えるから、たまに連絡してよ」
良子は、誤解が解けたことにホッと胸をなで下ろすも、
「じゃあメモ…あ、書くものないや!どうしよ…あ!コンビニで買ってくる!」
このチャンスを逃すものかという思いが強過ぎて、空回りする。
足踏みする良子の肩に平良の手が置かれ、ようやく動きが止まった。
「待て待て。落ち着こうよ。ハッハッ。良子ちゃんっておもしろいわ」
ポン、ポン、と二回肩を叩き、おかしそうに笑う平良。
肩と顔が熱い。
良子は何も言えず、悔し紛れに口を尖らせるだけだった。


