男は、もう一人の店員であるあたしに気がつくと、近づいてきて、二の腕を乱暴に掴みオモチャのような華奢なジャガーナイフをあたしの頬に突きつけた。


明らかにあたしを女と見て油断して、人質まがいに楯にする気だ。


「早く、金を出せ」


一度怯えてしまった田中くんは、もう使い物にならない。


震える手でレジを開けようとするけれど、旨く操作ができない。


「早くしろ! 殺されたいのか!」


男は一向に進展しない事態に痺れを切らし、苛立っていた。