あたしが早朝入荷してくる商品の陳列スペースを整理し終え、学生アルバイトの田中くんとレジを交代しようとカウンターに近づいた時だった。

入口前の駐車スペースに止まった原付バイクから、フルフェイスのヘルメットを被った男がそのままの姿でコンビニの入口に向かって歩いてくるのが見えた。

あたしは最悪の事態を想定し、田中くんに向かって囁いた。



「警報ボタンを直ぐ押せるように確認して」



昨今のコンビニ強盗の増加から、このコンビニにも警備会社直通の警報ボタンが設置されていた。

深夜契約店を巡回パトロールしているこの警備会社なら、警報ボタンを押してから最長でも10分あれば警備員が駆けつける筈だ。

幸いなことに、店内に客はいない。

ってか、いないからこういう不審な男に狙われるわけだよね。

案の定、男は暫く店内と辺りを見回し客がいないのを確認すると、フルフェイスのヘルメットを被ったまま店内に足を踏み入れた。