「シャンパンでございます」
給仕の言葉と共に注がれたのは、黄金色に輝く泡立ち上る液体。
前に座る坂本弁護士を見ると、ニコリと笑って一言。
「たまには良いだろ?」
驚きを隠せないあたしは、それでもやっぱり拙いんじゃないかと食い下がる。
「でも……、この後お仕事じゃ?」
「今日はもう事務所は閉めてきた。
美樹さん、あんまり固くならないで。
この店は味が良いから、ハイソの面々に人気だけど、やってるのは僕の学生時代からの友人だから。
気楽に味わってよ」
その一言で、少し救われた気がした。
グラスを持って、彼が乾杯の姿勢をとった。
「じゃ、初めてのデートに乾杯!」
「デ、デート?!」
「あれ? 違った?
僕はそのつもりでいたけど……
まあ、いいや。
じゃ……、美樹さんのリフレッシュ休暇に、乾杯!」
お酒を口にする前から、あたしの顔は恥ずかしさで真っ赤になっていたに違いない。
朝の出来事といい、今の状況といい、神はあたしに何のプレッシャーを与えようとしているのだろうか。



