帰るまでの間、とくに話したりはしなかった。 何を話したらいいのかおわからなかったし、お互いがそれでもいいと思っていたんだと思う。 「ありがとう、田村君。送ってくれて」 「いや…。あのさ、田村君って呼ぶのやめてくれない?普通に仁(ジン)でいいから」 「あっ、そっか。…わかった、そう呼ぶ」 「じゃあ、また明日な」 去って行く仁の後ろ姿を、見えなくなるまでただ見ていた。