「例えば、ここから落ちて死んだら、
迷惑かける人はどのくらいか知ってる?」


私は“さゆりちゃん”の顔が見られず、
少しうつむき、小さく首を横に振る。


「線路に落ちて死んだら、
電車が止まって、たくさんの人が迷惑を被るの。」


“さゆりちゃん”が、どんな顔で話しているのか、わからない。
どう顔を合わせて良いのかも、わからない。
動悸が止まらない。


「ここからだったら、
そこまで迷惑はかからないかもしれないねぇ?
ほたるちゃん。」


そっと顔を上げると、さゆりちゃんは、
綺麗な顔に、綺麗な笑みを作り、こちらを見ていた。


「でも、怖くなっちゃったんでしょ?」