ある日、若葉はおばあさんと市場へ出掛けました。おばあさんは自分で作った野菜を売り、油や麦を買ったのです。

冬は日が落ちるのが早く、夕刻だというのに辺りは闇に呑まれそうです。

「………………おばあさん、暗くて怖い…あのおじさんもついてきてるよ…」

怖がる若葉とは対照的に、柔らかな笑みのままのおばあさん。
おばあさんは、言いました。

「そうだね……
若葉や、しりとりをしよう」

若葉は怪訝そうに訊ねます。

「………おばあさん…暗闇が怖くない…?」

若葉は、声を出すことが怖いのです。後ろの何者かに、何かを悟られてしまいそうで…

「…家に戻ったら、婆がよく教えよう。いいかい、なるべく長く続けるんだ」

「…じゃあ"わかば"の[は]から」

若葉とおばあさんのしりとりが始まりました。