「若葉っ!!」



若葉がふらり、と木のもとへ行きかけた時おばあさんの声がしました。
ひどく緊張した声で、若葉は驚きました。

「おばあさん」

「若葉、これをお持ち」

おばあさんは黒い数珠を若葉の手に握らせました。

「若葉、いいかい。よく覚えておきなさい。
あの人に"呼ばれ"ても、決して行ってはいけないよ」

「なぜ行ってはいけないの?あの人は私の名を呼んだわ」

「行ってしまったら…あの人の一部に…いや、死んでしまうかもしれない。
だから、行ってはいけないよ」

「…………はい」



若葉はおばあさんの鬼気迫る様子を察して、その教えを守ることにしました。