「さてと、どうするかな。1対1で勝負する?」
男は勝ち誇ったような笑みで私に聞いた。
「それ、乗った。私が勝ったら、アンタの頭の居場所、教えてよ。」
私は自身のない勝負に賭けた。
こんな体格のいい、若い男に勝てる女なんていないだろう。
だけど、私の取り柄はこれと記憶力しかない。
今、これを使わないで何に使うって言うの?
ずっと、役に立たない能力だと思ってた。
だけど、この能力を必要としてくれる人に出会えた。
私は、おじいちゃんの、友達の、先生の、家族のために、どんな勝負だって受けるよ。
「OK。じゃあ、スタート。」
男の合図で始まった。
男は、私が女だからと言って容赦しない。
強い。
男の拳が幾度も私の顔を狙ってくる。
私は避けることに精一杯だ。
「あれ?反撃してこないんだね。俺、強すぎ?」
男は余裕の表情を見せて、また私の顔めがけて拳を伸ばした。
でも、私にだって策がある。
男にしか効かない策がね。