「…な、成弥!?」
恭平君の驚いた声で、私は現実に引き戻された気がした。
感覚が戻って来た世界は、夢でなかったし…
夢であって欲しかった…
でも、これは紛れもなく現実。
成弥と神崎さんがキスをしていた。
教室のドアの窓から見た私達からは見えたのは、成弥は背中。
それだけでも、“成弥”だと分かってしまった。
分かたくもなかったのに…
今では見慣れた大きい背中に、無造作にセットされた明るい茶色の髪…
分かっちゃうよ…
恭平君だって、分かったんだもん…
気付かなきゃよかったのに…
成弥と神崎さんのキスなんて、見たくなかった…
それでも、しっかりと目に映されてしまった。
記憶を消せるなら、今すぐ消したいと願った。
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