「わからないっていうなら、わからせるまでだ。」
グッと顎を掴んでいた指が、スウッと頬を撫ぜる。
不機嫌さを隠そうともしない、冷たい声色に、子猫を慈しむかのような甘い視線。
どっちが本物なのか、どちらを信用すればいいのか。
ギャップに囚われた私は混乱するばかり。
「あいにく俺は、昔から教えるのが上手いんだよね。だから、いくら物分りの悪い尼崎サンだって、満足いくものになると思うんだ。」
「君は、黙って俺に従っていればいい。」
「君には、俺に服従する義務がある。俺には、そうさせる権利がある。」
「君は俺のモノだ。」
ピタッと。
それまで好き勝手に顔の輪郭をなそっていた指が唇の上で止まった。

