「──君は、"はい"も"イエス"も言わないで、俺に"離せ"なんて命令するんだ?」 低い落ち着いた声は、鼓膜はおろか内臓までもびりびりと萎縮させる。 ("はい"も"イエス"も同じじゃんって突っ込みは、あえてのスルーの方向で。) 「俺は、君に話を聞いてるかどうか、質問したつもりだったんだけどなあ。」 肩が、ピクリと跳ねた。 「前々から使えない使えない奴だとは思っていたけれど、まさかひとの話まで満足に聞けないだなんて。」 なんで、って。 何度思ったことだろう。 「がっかりだよ。」