「さあ、」



俺を説得してみせてよ、なんて薄ら笑いを浮かべて。

意地の悪い光を放つ猫目は"俺が納得するわけがない"と言外に語ってみせていて。


悔しい、むかつく、不平等だ。


なんて、思ってみたりするのだけれど。



持ち前の臆病さが仇となって、思いもがけずハードルを上げられてしまったことに対する焦りと不安が、身体全体を駆け巡って。



「…離して、」



蚊の鳴くような弱々しい声で、呟くのが精一杯だった。