「うえむら……上村ちさと、といいます」 どういう字を書くのか問われ、私は空に人差し指を掲げた。一文字づつ丁寧に書きながら教える。 「可愛いい名前だね」 外灯で照らされた表情は、一重のつり目が柔らかく笑んだ。 「おっと、これじゃあおじさんが口説いているもんだから――」 腰を上げた、遠川さんっていう人は、私に手を伸ばす。 「おうちまで送るよ」 いいの?私、この人の手を握っても…… 「……」 私は手を握らなかった。