私は文庫本に視線を向けるふりをして、ちらりと彼女へ視線を伺った。 彼女は項垂れて、とぼとぼと廊下側の一番前の席に戻っていった。 他の人にも当たって、砕けたのか。 とにかく、私と上村ちさとの関係は対角線上の席という関係しかなかった。