「え?」
思わず口にした瞬間、奴の目がぱっちり開き、
あたしの視界が ぐるっと一転した。
ドサッ…
「また名前 呼んでくれたんだ」
「な……!! 起きてたのかよ…っ!」
「うとうとはしてたな」
また コイツは嬉しそうな顔をする。
あたしはソファーに押し倒されてる状態になった。
「ちょ……退けよっ!」
「ヤーだ。 つか、亜美 風呂上り、色っぽすぎ。
誘ってんの?」
「んなワケないしっ!」
奴はいつも余裕そうで、気にくわないんだ。
だけどそれに反して、心臓は止むことを知らない。
「嘘だって。 襲わねーから」
「既に襲われかけてるんですけど?」
「まだ襲ってねーじゃん。 それにもうキスはしたんだし?」
「…!!!」
そんなこと軽々言うなよ…。
「名前、呼んでくれて 嬉しかった。 それだけだよ」
「………っ」
「亜美はまだ、昔の俺と重ねてるのかもしれないけど」
その表情が悲しそうに見えたのは、気のせいではないかもしれない。
気付けば、あたしは言葉を発していた。
「……重ねてなんか、ないよ」
「――!」
「比べた、けど。 寝顔が昔の紀理とそっくりだったから…。
やっぱ 紀理なんだって思ったから、呼んだんだと思う」
何 言ってんだろ、あたし…。
コイツに悲しい顔させたくなくて、勝手に口が動いた。
「…亜美………」

