「凄い!歌、上手なんだね、あの人」


「あぁ ガックン?あいつだけじゃなくて、みんな上手いよ(笑)」


「じゃあ、後で歌って!」


「いいよ」


両腕を私の腰にまわし、抱きしめられるような形で、ただゆっくり体を揺らしてた。


私はそんな彼に全てを預けたように、自然と彼の動きに体が動いていた。


これじゃ、おば様達がハマる訳だと、納得した。


「名前…聞いてなかったね」


「綾…」


「えっ?聞こえない」

そう言って、彼の耳が私の口元まで近づいてきた。


ちょうど、歌がサビで盛り上がってたせいで周りの人達もみんな相手と急接近してた。


「綾!」


「あや?」


「そう!」


「俺はサトシ、綾より2つ上」


そうして、悟史に歌をリクエストして悟史の番を待った。


「ちょっと、平沢さん!あの子ここのナンバーワンなのよ!独り占めは駄目よ!」


なんなんだか…


おば様達のクレームを軽く聞き流しているうちに、悟史の歌が始まった。


私の大好きなアーティストの歌をリクエストした。


ノリノリの歌


悟史の歌に鳥肌が立つ程、感動した。


自分の好きなアーティストの歌をこんなに上手に歌ってくれた人は初めてだったから。