「何をおっしゃるんですか!」

「貴方みたいに若い女の子が、日曜日に上司のお見舞なんておかしいじゃない」

「彼氏はいますよ
いるけど必ず日曜日に合う訳じゃないし」

こんな嘘がさらさら出て来る自分に感心した

「そう…」

奥さんはそれもそうかと言う納得と自分を捨てて夫との関係を訪ねた恥ずかしさとが困惑しているようだった。


「お姉ちゃん!手遊びしてぇ」

子供達が私にまとわりついて来た…

奥さんが

「ナナちゃん…瑠璃連れてパパの側に行ってあげてママ…お姉さんとまだ、話しがあるから…」


ナナと瑠璃か…

子供達は元気良く

「わかった!!」

と言って病室に向かった。

ロビーには私と奥さんだけ…。


「私…そろそろ帰らないと…彼氏とこれから約束あるんで…」

「そう…今日はわざわざありがとね…」

私はとびきりの作り笑顔でお辞儀をして席を立ち、そのまま病院を出た。


帰り際に、ふりかえって早瀬さんの病室の窓を見た…

姿なんて見えない

でも…窓から目が離せなかった。

離したくなかった…

もしかしたら、早瀬さんが子供達から事情を知って、帰るだろう私の姿を窓から見つめてくれる…

そんな想像と果てしない期待が私を病院からなかなか離してはくれなかった。